目次
📖 PERとは
PER(Price Earnings Ratio:株価収益率) は、株式投資における最も基本的で重要な指標の一つです。企業の株価が1株当たり純利益(EPS)の何倍で取引されているかを示します。
🎯 PERの基本概念
PERが示すもの:
- 投資家が企業の1年分の利益に対して何倍の価格を支払っているか
- 現在の利益水準で投資元本を回収するのに必要な年数の目安
- 市場が企業の将来性をどの程度評価しているか
例:PER 15倍の企業 → 理論上、現在の利益水準が続けば15年で投資元本を回収可能
🧮 PERの計算方法
基本計算式
PER = 株価 ÷ 1株当たり純利益(EPS)
または
PER = 時価総額 ÷ 当期純利益
📊 実際の計算例
トヨタ自動車(7203)の例(2025年8月時点の仮想データ):
- 株価: 2,500円
- EPS: 250円
- PER: 2,500円 ÷ 250円 = 10倍
計算の意味: この結果は「投資家がトヨタの1年間の利益の10倍の価格を株価として支払っている」ことを示します。
💰 時価総額を使った計算
- 時価総額: 15兆円
- 当期純利益: 1.5兆円
- PER: 15兆円 ÷ 1.5兆円 = 10倍
📊 業界別PER水準
🏭 主要業界のPER目安(2025年基準)
業界 | 一般的なPER水準 | 特徴 |
---|---|---|
IT・ソフトウェア | 20-40倍 | 高成長期待、変動大 |
製造業(自動車・機械) | 8-15倍 | 景気循環の影響大 |
金融(銀行・保険) | 6-12倍 | 金利環境に敏感 |
小売・消費財 | 12-20倍 | 安定的な需要 |
医薬品 | 15-25倍 | 研究開発投資大 |
公益事業 | 10-16倍 | 規制業種、安定性 |
不動産 | 8-15倍 | 金利・景気感応度高 |
素材・化学 | 8-18倍 | 原料価格変動影響 |
🌟 業界特性とPER
高PER業界の特徴:
- 高成長期待
- 変動性が大きい
- 将来性に対する期待値が高い
低PER業界の特徴:
- 成熟した業界
- 安定的な利益構造
- 景気循環の影響を受けやすい
⚖️ PERによる割高・割安判定
📏 判定基準の考え方
🔍 絶対基準
- PER 10倍以下: 一般的に割安とされる
- PER 10-20倍: 適正範囲
- PER 20倍以上: 割高の可能性(成長性要考慮)
📊 相対基準(より重要)
- 業界平均との比較
- 過去の水準との比較
- 市場全体との比較
💡 実践的な判定方法
ステップ1:業界比較
企業PER ÷ 業界平均PER = 相対PER
0.8以下: 業界内で割安
0.8-1.2: 業界平均程度
1.2以上: 業界内で割高
ステップ2:過去水準比較
- 過去5年間のPER推移を確認
- 現在のPERが過去のレンジのどこに位置するか
ステップ3:成長性考慮
- 利益成長率とPER水準の整合性
- PEGレシオでの評価
🔍 PERの種類と使い分け
📈 予想PER(Forward PER)
計算式:
予想PER = 現在株価 ÷ 来期予想EPS
特徴:
- メリット: 将来の業績を反映、投資判断により適している
- デメリット: 予想の不確実性、修正リスク
適用場面: 投資判断、銘柄スクリーニング
📊 実績PER(Trailing PER)
計算式:
実績PER = 現在株価 ÷ 過去12ヶ月のEPS
特徴:
- メリット: 確定数値、客観性が高い
- デメリット: 過去の情報、将来性反映せず
適用場面: 過去実績の評価、他社比較
🔄 修正PER(Adjusted PER)
概念: 特別利益・損失を除いた正常化利益ベースのPER
計算手順:
- 当期純利益から特別損益を除外
- 正常化利益でEPSを再計算
- 修正EPSでPERを算出
重要性: より正確な収益力評価が可能
📈 PEGレシオとの組み合わせ
🧮 PEGレシオの計算
PEG = PER ÷ 予想利益成長率(%)
📊 PEGレシオによる評価
PEG値 | 評価 | 投資判断 |
---|---|---|
0.5以下 | 大幅割安 | 強い買い候補 |
0.5-1.0 | 割安 | 買い候補 |
1.0-1.5 | 適正 | 中立 |
1.5以上 | 割高 | 慎重判断 |
💡 PEGの実践例
成長企業A:
- PER: 30倍
- 予想成長率: 25%
- PEG: 30 ÷ 25 = 1.2(適正水準)
成熟企業B:
- PER: 12倍
- 予想成長率: 5%
- PEG: 12 ÷ 5 = 2.4(割高)
🎯 PEG活用の注意点
- 成長率の持続性: 高成長が続くかの検証必要
- 業界特性: 成熟業界では低成長が正常
- 景気循環: 循環的な成長と構造的成長の区別
⚠️ PER分析の注意点と限界
🚨 PER分析の落とし穴
1. 利益の質の問題
- 特別利益含む: 一時的な利益でPERが低く見える
- 会計操作リスク: 利益の意図的な調整
- のれん償却: M&A企業の利益圧迫要因
2. 業界・企業特性の無視
- 成長段階: ベンチャー企業と成熟企業は基準が違う
- ビジネスモデル: 資産集約型と軽資産型で異なる
- 地域特性: 新興国と先進国で水準が異なる
3. 市場環境の影響
- 金利水準: 低金利時は高PER許容度上昇
- 市場センチメント: 強気相場では全体的にPER上昇
- 流動性: 取引量少ない銘柄はPER歪み
📋 PER分析改善のチェックリスト
✅ 利益の質を確認
- 特別損益の影響除外
- 継続的な利益かどうか
- キャッシュフローとの整合性
✅ 比較基準の妥当性
- 同業他社との比較
- 過去水準との比較
- 成長性との整合性
✅ 将来性の考慮
- 業績予想の信頼性
- 事業環境の変化
- 競争優位性の持続性
💡 実践的なPER活用法
🎯 投資スタイル別PER活用
📈 グロース投資での活用
- PEGレシオ重視: PER単体でなく成長率考慮
- 将来PER算出: 2-3年後の利益予想でPER計算
- 業界リーダー比較: 同業界の成功企業と比較
💰 バリュー投資での活用
- 過去PER比較: 歴史的水準との比較
- 資産価値考慮: PBRとの組み合わせ評価
- 配当利回り併用: 総合的な割安度判定
⚖️ 総合分析での活用
- 複数指標組み合わせ: PER + PBR + ROE
- セクターローテーション: 業界別PER水準の変化追跡
- 市場タイミング: 市場全体PERでの投資判断
📊 スクリーニング手法
基本スクリーニング条件
・PER 5-15倍(極端に低い・高いを除外)
・予想PER < 実績PER(成長期待)
・ROE 10%以上(収益性担保)
・時価総額 500億円以上(流動性確保)
詳細分析項目
- PER推移: 過去5年のトレンド
- 予想修正: アナリスト予想の変化
- 同業比較: 業界内でのポジション
- 成長持続性: 長期的な成長可能性
📚 具体的な分析事例
🚗 事例1:トヨタ自動車(7203)のPER分析
基本データ(仮想データ)
- 現在株価: 2,500円
- 実績EPS: 250円
- 実績PER: 10.0倍
- 予想EPS: 280円
- 予想PER: 8.9倍
業界比較
- トヨタPER: 10.0倍
- 自動車業界平均: 12.5倍
- 相対PER: 0.8倍(20%割安)
成長性評価
- 予想成長率: 12%
- PEG: 10.0 ÷ 12 = 0.83(割安水準)
投資判断
✅ 業界内で割安
✅ 成長性考慮でも適正
✅ 世界的競争力保有
→ 投資検討価値あり
🍜 事例2:味の素(2802)のPER分析
基本データ(仮想データ)
- 現在株価: 4,200円
- 実績EPS: 200円
- 実績PER: 21.0倍
- 業界平均: 18.5倍
詳細分析
- ROE: 14%(高水準)
- 海外売上比率: 60%(成長性)
- 研究開発費率: 3.5%(競争力投資)
PEG分析
- 予想成長率: 8%
- PEG: 21.0 ÷ 8 = 2.6(やや割高)
投資判断
⚠️ 現在PERは割高感
✅ 長期成長ストーリー有効
→ 押し目での投資検討
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外部リンク
⚠️ 重要な免責事項
本記事の内容について
- 本記事に記載された情報は、教育・情報提供のみを目的としており、投資助言や推奨を行うものではありません
- PERの分析手法や判断基準は一般的な内容であり、個別銘柄の投資判断は読者の自己責任で行ってください
- 投資や取引を行う際は、最新の正確な財務データを確認し、必要に応じて専門家に相談することを推奨します
PER分析の限界について
- PERは過去または予想の利益に基づく指標であり、将来の株価を保証するものではありません
- 業界特性、企業の成長段階、市場環境により適正PER水準は変動します
- PER単体での投資判断は危険であり、他の指標と組み合わせた総合的な分析が必要です
投資リスクについて
- 株式投資には元本割れのリスクが伴います
- 過去の実績は将来の結果を保証するものではありません
- 投資判断は必ず自己責任で行い、余裕資金での投資を心がけてください
- 記事中の具体的な数値例は説明目的の仮想データであり、実際の投資判断には使用しないでください
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